上司「原因は何だ?」
部下「偽陽性を引き起こす物質のオリゴへのコンタミネーションだと思われます。」
上司「オリゴサプライヤーに連絡して、早急に原因調査と再製造と改善を依頼して!」
部下「承知しました。」
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オリゴサプライヤー「申し訳ございません。原因を調査しますが、少々お時間をいただきます。再製造を急ぎます。改善にも取り組みます。」
上司「再製造されたオリゴの受入検査の結果は?」
部下「前回と同様に偽陽性が出ました。コンタミネーションは解消されていないようです。」
上司「え?原因の調査結果は?」
部下「原因も不明のようです。製造ラインのクリアランスを依頼しましたが、製造ラインを止められないので対応不可とのことでした。」
上司「原因も不明、再製造もダメ、クリアランスもできない。こんな状態でいつになったら新製品は発売できるのか?どうしてこんなことになってしまったんだ・・・」
初めまして。株式会社ニッポンジーンマテリアルの木村と申します。
セールス&マーケティングシニアマネジャーとして、オリゴヌクレオチド事業の営業を担当しています。また、体外診断用医薬品原料用オリゴヌクレオチド製造の品質マネジメントシステムの品質管理責任者も担当しており、お客様に満足していただける品質管理を心掛けています。
冒頭で、原料オリゴで生じうるトラブルをシミュレートしてみました。最悪の事態を避けるための一つの手段として、弊社の製品をご検討いただきたいと考えております。まずは、弊社の製品を知っていただきたく、このたび、「体外診断用医薬品原料用オリゴに求められる品質とは?」というタイトルで、全6回の連載を掲載させていただきます。
ぜひ、体外診断用医薬品原料用オリゴに必要とされる品質についてご理解を深めていただければと考えています。
以下のタイトルでお届けする予定です。
第1回 体外診断用医薬品原料用オリゴヌクレオチド製造への取り組み
第2回 体外診断用医薬品の法規制
第3回 ISO13485:2016の運用
第4回 コンタミネーション対策
第5回 リスクマネジメント
第6回 製品ラインナップ
それでは、第1回をご一読ください。
新型コロナウイルスの蔓延により、新型コロナウイルス感染症の体外診断用医薬品(In Vitro Diagnostics:IVD)が数多く開発されました。2022年4月8日時点で、核酸増幅法に基づく承認薬は42品目となっています(厚生労働省ホームページ)。
新型コロナウイルスの核酸を検出する核酸増幅法において、新型コロナウイルス特有の遺伝子配列を認識するための鍵となっているのが「オリゴヌクレオチド」です。オリゴヌクレオチドは化学的に合成された核酸(DNAもしくはRNA)の総称となっており、核酸増幅法での機能的な面から「プライマー」、「プローブ」と呼ばれています。検体内に新型コロナウイルスが存在した場合には、プライマーおよびプローブが検体内の新型コロナウイルスに特有な遺伝子配列を認識して、新型コロナウイルス核酸の一部が増幅されて、新型コロナウイルス陽性と判定されます。
新型コロナウイルス感染症以外の病気を診断するための核酸増幅法に基づく体外診断用医薬品においても対象検出原理は同様であるため、プライマーおよびプローブの重要性もまた同様です。プライマーおよびプローブの製造工程に不具合があって遺伝子配列の認識能力が低下した場合には、検出可能な増幅が生じない「偽陰性」や非特異的な増幅が生じる「偽陽性」が発生する可能性があり、診断および治療法の決定に大きな影響を与えてしまいます。
プライマーおよびプローブが適切に対象を認識して正確な診断結果をもたらすためには、プライマーおよびプローブが正しい配列を有していること、正しく標識されていること、夾雑物を有していないこと、常に同じ品質を維持し続けること、などが要求されます。そのため、プライマー・プローブの製造には厳格かつ多面的な管理が必要となり、オリゴヌクレオチドサプライヤーとして、製造管理が行き届いた安全・安心なプライマー・プローブを体外診断用医薬品メーカー様に提供することが弊社の社会的意義だと認識しております。
弊社では、上記の社会的意義を果たすために、体外診断用医薬品の原料としてご使用していただけるオリゴヌクレオチドのカテゴリーとして「IVDオリゴ」を製造・販売しています。「IVDオリゴ」は3種類のグレードから構成されております。最上位かつ体外診断用医薬品向けグレードが「リライアブル&トレーサブルオリゴ」です。「リライアブル」は信頼性が高いという意味であり、弊社の法規制への対応やコンタミネーション防止への取り組みを表現しています。「トレーサブル」は追跡可能という意味であり、様々な作業工程での記録によりトレーサビリティを確保して、ご要望に応じて開示することを示しています。
次回以降は、弊社が「リライアブル」と「トレーサブル」を実現するためにどのような活動を実施しているのかを紹介していきます。
<第2回へ続く>