今回は、弊社におけるISO13485:2016の運用についてご紹介します。
ISO13485:2016は、医療機器における品質マネジメントシステムの国際規格であり、日本を含む世界各国の医療機器に関する規制において品質マネジメントシステム(QMS)の基準として採用されています。弊社では、2009年12月にISO13485:2003の認証を取得しました。その後、2018年に改訂版であるISO13485:2016に移行して現在まで認証を継続しています。認証のスコープは「IVDオリゴヌクレオチドの製造(Manufacture of IVD Oligonucleotides)」となっています。
弊社では、ISO13485:2016QMSを運用するための品質マニュアルを定めて文書化しています。この品質マニュアルにて、弊社のQMSの適用範囲を定め、弊社が引き受けている役割が「体外診断薬の原料供給業者」であることを宣言しています。弊社では設計・開発業務を行っていないため、「7.3設計・開発」は適用除外としています。さらに、弊社で製造しない医療機器や提供していないサービスについては不適用としています。
ISO13485:2016ではトップマネジメントのコミットメントが重要であり、トップマネジメントが掲げた基本方針・品質方針が品質マニュアルに記載されています。これらの方針に基づいて、毎年の品質目標および実行計画を立ててQMS活動を実行しています。また、QMS活動における適切性、有効性の維持を確認するために、QMSマネジメントレビュー(年1回)・リスクマネジメントレビュー(年1回)・内部監査(年1回)・認証機関による審査(年1回)が実施されています。さらに、社内コミュニケーションとして、トップマネジメントからの発信(月1回)、全社員ミーティング(週1回)、リスクマネジメントミーティング(2~3か月に1回)も実施されています。ご要望に応じて、お客様による監査を適宜受け入れしています
ISO13485:2016は要求事項として33項目の「手順の文書化」を要求していますが、弊社では17種類の文書(規定)に取りまとめて文書化しています。また、「要求事項の文書化」に対して3種類の規定、その他の業務内容などを文書化した規定が2種類あります。さらに、医療機器ファイルとして「製品標準書:IVDオリゴヌクレオチド」という文書を作成して保有しています。品質マニュアルのもとで合計23種類の文書によってQMS活動が管理されています。ISO13485:2016は「要求事項の記録」も要求しており、弊社では34項目に関する記録を作成・維持することにしています。規定や製品標準書の下位文書として、実際の業務内容や手順を取りまとめた「作業要領書」も文書化しており、現時点で約100種類の作業要領書を使用しています。
製造記録に関しては、作業要領とチェックシートが一体化した「チェックリスト」を用いています。作業日、作業者、使用した機器、個々の作業の実施チェックなどが記録されています。1つの注文分のチェックリストおよび分析データなどをまとめて1冊のファイル(バッチレコード)として保管しています。
ここでシミュレーションとして、オリゴヌクレオチドに不具合があるとお客様からクレームが入った場合の対処を想定してみます。まずは製造の作業内容にミスや不具合がなかったかを調査することになるのですが、そのために製造記録の内容を精査する必要があります。体外診断用医薬品原料用オリゴヌクレオチドではバッチレコードが作成・保管されていますので、バッチレコードを閲覧すれば一連の作業に沿った製造記録を確認でき、さらにリンクされた関連する様々な記録を参照することも可能です。したがって、ミスや不具合の有無を短時間で確定することができ、お客様への迅速な回答が可能となっています。他方、研究用オリゴヌクレオチドでは、作業ごと・機器ごとの記録となっており、各オリゴヌクレオチドの固有番号(Batchナンバー)を使って作業ごと・機器ごとに製造記録をピックアップして整合性のある状態につなぎ合わせるのは時間と手間が大変かかりますので、お客様には長い間お待ちいただくことになります。体外診断医薬品用原料としてどちらの管理・対応が適切であるかは明白です。
弊社はISO13485:2016QMSを運用することによって、各オリゴヌクレオチドの製造記録の管理、さらに付随する作業員・設備・環境などの記録をトレース可能な状態で維持しており、製品名に掲げる「トレーサブル」を実現しています。
ISO13485:2016の運用は、弊社の特徴でもある「コンタミネーション対策」における管理にも活かされおり、次回の記事にて紹介させていただきます。
<第4回へ続く>